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2015-08-10 [Mon]

子供を育てるコスト

少し冷静になって、感情論とかそういうのを全部抜きにして、「子供を育てるコスト」というものを考えてみたい。

教育費のように数字になって出てこない種類のコストについて、だ。

たとえば、夫婦共働きで、(理想的には)父母両方に同じくらいの育児の負荷がかかっているとしよう。

育児の負荷ってのは、それまで存在していなかったものが追加されるので、確実に何かを犠牲にする。

たとえば趣味の時間。しかし、多くの場合は、趣味の時間だけでは飽き足らず、仕事の時間も食いつぶす。

一般的に、子供ができると仕事のパフォーマンスは落ちるものだ。男女問わず。

トヨタが配偶者手当を廃止して子供に対する手当てを手厚くするという発表を行った。これが企業側からのメッセージだと解釈すると、なんとか手当てってのはいわゆるBIのひとつなので、子供ができることによって仕事のパフォーマンスが落ち能力評価が下がったとしても、その分は会社が保証するから安心して子供を育てるように、と読める。この規模の企業で、本当にパフォーマンスの低下が即評価の下落につながるかは微妙だけれど、つまりはそういうことだ。

子供ができると子供のための消費は大幅に増えるけれど、趣味の消費は減るだろう。同時に、仕事の成果という意味での生産量も減る。夫婦両方ともだ。

これを回避する方法としては1)そもそも生産していない人が育児を負担する、2)育児の負担を分散させる、という方法が考えられる。前者は端的に言えば、専業主婦は生産していないから育児をすべて行うべきだという昭和のやりかた。あるいは、子供は何も生産していないから、年長者が子守をするべきだというやりかた。後者は、祖父母や親戚や近所の人や、みんなで子育てをしましょうという考え方。

どっちも、現代社会では非現実的ですな。

あとは、沢山生産能力がある人のパフォーマンスを落とさないために、育児はシッターさんを雇うという考え方もある。

ところが日本はベビーシッターが超お高い。都市部と田舎とで経済格差がある国だと、地方から出てきた住み込みのシッターさんを雇うことができるかもしれないが、日本では現実的に無理。

となると、どうやっても、子供が生まれるとその親の生産性は落ちる。直近の生産性は落ちる。成果と給与が直接連動する組織に勤務していたら、収入も下がる。

少子化問題と、男性の育児参加と、女性の社会進出と、そのあたりの議論をするときに、「子供を生んで育てると、親の生産性が落ちる」という現実はきちんと計上しないといけなくて、そのコストを支払ってもなお、子供を生んで育てる価値があるということを示せないといけない。

実際のところ、子供って親の工数をむしゃむしゃ食って生きているようなものなわけだ。しかも無遠慮に。

それで、親側の生産性が落ちるのは、本末転倒だと思うわけだ。

長い目で見れば投資なのだろうけれど、親の仕事が多少でも属人化している種類の仕事だと、「今、この人がやらないといけない」という状況が発生する。その時に育児が足かせになるのは、そもそもおかしい。そんなんで先進国とか言えるわけがない。

どのような現実的な解法があるのかは分からないが、おそらくドラスティックな改革ではなく、小さな仕組みを沢山積み上げていくしかないのだろうとは思う。


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